うつ病の運動療法研究報告 

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運動がうつ病に効果を示した海外の研究報告

運動がうつ病に対して、どれほど有効かという海外の研究報告をいくつか簡単にご紹介いたします。


有酸素運動と抗うつ薬(SSRI)との比較

有酸素運動と比べ、抗うつ薬は再発率が高い

抗うつ薬よりも、有酸素運動のほうが、即効性がある

有酸素運動と認知療法は、同等の効果がある

作業療法より有酸素運動のほうが、効果が高い

定期的にスポーツをしない人は、する人と比べ、うつ病を発症しやすい

有酸素運動と無酸素運動は、ともに抗うつ効果がある




◆ 有酸素運動と抗うつ薬(SSRI)との比較

[1999年、米国デューク大学医学部のブルメンサル教授の報告]
この報告は、有酸素運動と抗うつ薬(SSRI/日本での商品名はジェイゾロフト)が、同じ程度の効果を示した世界で初めての治験。DSM-Wによって、うつ病と診断された男女156名(50歳以上)を対象に、ランダムに三グループに分け、一六週間の治験を実施し、うつ病の改善率を比較した。

三グループの内訳は、

グループT⇒SSRI服用のみ

グループU⇒一回30分の有酸素運動(トレッドミルまたはエアロバイク)を週三回実行

グループV⇒SSRIと有酸素運動を併用

結果
治験後にうつと診断されなくなった被験者が、グループTは65・5%、グループUでは60・4%、グループVが68・8%と、多少数値に違いがあるが、三グループすべてで、うつ病が改善。


◆ 有酸素運動と比べ、抗うつ薬は再発率が高い 

前項のブルメンサル教授は、16週の治療でうつから回復した三グループごとに、さらに六ヶ月に及ぶ追跡調査を実施。
結果
有酸素運動だけのグループUは、90%近くの人が10ヶ月も改善効果を維持し、しかも再発率は8%だけ。
かたやSSRI服用だけのグループTで回復した人が、10ヶ月後も改善効果を維持できたのは55%、再発率は38%にのぼった。
有酸素運動とSSRIを併用したグループVでは、改善効果が維持できた人は62%で、再発率は31%だった。
再発率だけ見ても、運動のみのグループUは、Tの約五分の一、Uの約四分の一という低さ。なぜ有酸素運動だけのグループは、他のグループよりも改善効果を維持できる人が多かったのか。
有酸素運動だけで、うつ病を回復した患者は、「抗うつ薬に頼らず、運動療法だけで、うつが改善した」という自信、達成感がうつを改善した一つの要因だと推測できる。


◆ 抗うつ薬よりも、有酸素運動のほうが、即効性がある

[2001年、ドイツ・フリー大学のディミオ教授の報告]
平均して九ヶ月間も深刻なうつ状態の男女12名(平均年齢49歳、男5名、女7名/うち10名は抗うつ薬を服用するも効果がない患者)を対象に、一日30分の有酸素運動を10日間続けた。
この有酸素運動とは、トレッドミルで速歩と遅歩き(速歩の半分の速さ)を三分間ずつ繰り返したもの。インターバル速歩と基本は同じです。
結果
6名が著しく改善した。しかも、その中の5名は、抗うつ薬が効かなかった患者。2名はやや改善。残りの4名は以前と同じ状態だった。
被験者が少ない治験結果ですが、わずか10日間の運動で、三分の二に効果があったわけです。ちなみに、抗うつ薬の効き方には個人差がありますが、だいたい二週間から四週間ほどで効き目が現れ始めます。ということからも運動の即効性が分かります。


◆ 有酸素運動と認知療法は、同等の効果がある

[1987年、フリーモントとクレイグヘッドの報告]
抑うつ度をチェックするBDIテスト(ベック博士のうつ病調査票)で、高得点者の49名を対象として、無差別に三グループに分けた。
1=有酸素運動グループ、2=認知療法グループ、3=有酸素運動+認知療法グループとして、治験を開始。
1の有酸素運動は、一日20分、週3回のランニングを実施。2の認知療法は、週に一回一時間の個人カウンセリングを受けた。3は、両方を並行して実施。
結果
10週間後に三つのグループともに、BDIテストの点数が下がり、四ヶ月後も効果が持続していた。


◆ 作業療法より有酸素運動のほうが、効果が高い

[1985年、ノルウェーの精神科医マーチンセンの報告]
DSM-V(1985年当時)で、うつ病診断基準九項目のうち、八項目が一年以上続いていた精神科入院患、男女49名が対象。
49名の患者を有酸素運動と作業療法を行なうグループに分けた。有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、スキー、水泳など)グループは、最大酸素摂取量が50%から75%になる運動強度で、一日一時間で週三回を九週間実行した。残りのグループは同時間を作業療法に費やした。
九週間後、有酸素運動グループの男女とも、持久力、パワー、柔軟性が著しく改善。さらに、「ベックのうつ病自己評価尺度」(21項目あり、点数が低いほどうつの度合いが低い)で、作業療法グループよりはるかに低い点数を示した。
さらに、マーチンセン医師は、1989年に、うつ病患者の男女99名を対象にした治験を報告した。99名は病院で標準的な治療を受けており、半数は有酸素運動(ウォーキングやジョギングなど)を、最大酸素摂取量が70%の運動強度で、一日一時間で週三回を九週間続けて行なった。
残りのグループは、同じ時間を柔軟体操、呼吸法、リラクゼーションなどを実行した。
結果
どちらのグループも同程度にうつ病が改善した。このことからマーチンセン医師は、有酸素運動と柔軟体操、呼吸法、リラクゼーションの二種類の運動によるうつ病改善は、主に気晴らし効果(前述)によると推測した。


◆ 定期的にスポーツをしない人は、する人と比べ、うつ病を発症しやすい

1 [1992年、ドイツのワイアラー博士の報告]
バイエルン市民1536名を対象に、うつ病のかかりやすさとスポーツ活動との関連を調査。
結果
ほとんどスポーツをしない人は、定期的に運動をする人より、3・15倍もうつ病にかかりやすかった。

2 [1994年、アメリカのパッフェンバーガー博士の報告]
ハーバード大学に在籍した約17000人を対象に、運動と心の健康レベルを一定期間ごとに追跡調査。
結果
一週間に三時間以上の運動をした男性がうつになる危険性は、一週間に一時間以内しか運動をしない男性より二七%も低かった。
また、一週間に1000キロカロリー以上を有酸素運動で消費した男性は、うつ病の発生リスクが、あまり運動をしない男性に比べ17%低く、2500キロカロリー以上消費した男性は、28%も低かった。


◆ 有酸素運動と無酸素運動は、ともに抗うつ効果がある

[1987年、米国ロチェスター大学のドイン教授の報告]
うつ病患者40名(すべて女性)を「ジョギング・グループ」「筋トレ・グループ」「運動なしグループ」の三グループに分け、前者の二グループには八週間のトレーニングを実施。その後、ベック博士やハミルトン博士のうつ検査を実施し、三グループを比較しました。
結果
運動なしグループと比べ、ジョギングと筋トレのグループは、顕著な改善が見られ、両者の改善効果に違いはなかった。


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